2025.10.12
  • 資産運用

投資は増やすより終わらせるほうが難しい| 利回りより大切な“出口戦略”の話

― 利回りより大切な“出口戦略”の話 ―

投資や資産運用の相談を受けていると、よく「どのくらい増えますか?」と聞かれます。
しかし、大切なのは途中経過でどれくらい増えるかではなく、最後にどれだけ手元に残ったか、です。


お金を増やすために大切なのは「どうやって終わらせるか」。つまり“出口戦略”です。

せっかく利回りを追求して思いどおりに増えても「現金化のタイミング」で損をしては意味がありません。
投資がうまくいかない理由の一つに、出口を決めていないこともあるのです。

■ “どれだけ増えるか”より“どう終えるか”が重要

■ “どれだけ増えるか”より“どう終えるか”が重要

人は数字に安心を求めます。
「利回り○%」「過去実績○年平均」──こうした数字を見ると、つい「数字が大きいほうが得」と思ってしまいます。

しかし、「利回りが高い=リスクも高い」ということを忘れてはいけません。
たとえば波のある商品で年5%の運用をした場合、相場が下がったときに慌てて売れば結果はマイナスになります。

逆に年2%でも緩やかな右肩上がりで、計画的に取り崩せる設計をしておけば、環境に左右されにくく老後や教育資金準備の安定に役立ちます。


投資は「いくら儲かるか」より、「いつ・どう使うか」を明確にしたほうが上手くいきやすいのです。

■ 出口を設計する3つの視点

■ 出口を設計する3つの視点

出口戦略とは、「売るタイミングを考えること」だけではありません。
“なぜそのお金を使うのか・いつ必要か・どう取り崩すのか”という3つの視点を揃えることで、初めて「出口を設計した」と言えます。


① 目的を明確に──「何のために使うのか」

教育費、老後生活費、住宅リフォーム、旅行など、目的によって取るべきリスクは大きく変わります。
目的が不明確なままでは、売却の判断もあいまいになり、結果として最悪のタイミングを選んでしまいがちです。


② タイミングを数値化──「いつ・どの期間で取り崩すか」

出口を年単位でイメージすると、リスク許容度を正しく見極められます。
10年後に一括で使うのか、20年間にわたって分割で使うのか──


取り崩しの期間が長いほど、リスク分散や段階的な売却設計が必要になります。


③ 相場に合わせず、“目的達成”で終わらせる

「相場が上がった・下がった」に振り回されるのではなく、
「目標金額に到達したら売る」というシンプルなルールを決めておきます。
これは感情を排除し、「設計」で判断するということです。



“出口を決める=感情ではなく目的で判断する仕組みを作ること”と言えます。

■ 商品別に考える「出口の違い」

■ 商品別に考える「出口の違い」

投資と一口に言っても、「出口」の考え方は商品ごとに大きく異なります。
それぞれの特徴を理解し、「どのように終わらせるのがベストか」を事前に知っておくことが重要です。

投資信託

出口で大切なのは「タイミング」よりも“方法”です。
一括で全て売却するより、定期的に分割して取り崩すほうが、価格変動を平均化でき、複利効果も長く維持できます。


積立型の保険

「返戻率」だけで判断せず、いつ解約するかを事前に把握しておくことが大切です。
また保険には「簡単にやめられない」という特徴がありますが、これは裏を返せば
“継続を助ける仕組み”=強制力による貯蓄効果でもあります。


不動産

売却価額だけを見ていると失敗します。


一般的な出口コスト(税金・仲介手数料・登記費用・修繕費・ローン残債)のほか、所有年数による税率の違い、減価償却の回数なども最初に計算しておくことが重要です。




「買う前に出口の数字を見積もれるかどうか」が、成功と失敗を大きく分けます。

同じ「投資」でも、出口の考え方は大きく違います。

だからこそ“商品を選ぶ前に、出口を選ぶ”という視点が必要なのです。

■ 出口戦略で“投資の意味”が変わる

■ 出口戦略で“投資の意味”が変わる

投資は、利回りを追いかける「数字のゲーム」ではありません。本来は、将来の安心を買うための仕組みづくりです。



出口戦略を考えることで、


「自分は何のために資産を持っているのか」
「どんなタイミングで、誰のために使いたいのか」


──という“人生設計そのもの”が見えてきます。


投資の出口戦略とは、突き詰めると「人生をどう終わらせるか」につながります。
出口までの道筋を描けて初めて、“利回り”が意味を持ち、

ゴールが明確になった瞬間、投資は「増やす行為」から「人生をデザインする行為」へと変わります。

■ 出口は換金だけじゃない──“次につなぐ”という考え方へ

■ 出口は換金だけじゃない──“次につなぐ”という考え方へ

「出口=売却して現金化すること」
多くの人はそう考えがちですが、実は出口はそれだけではありません。


配当金・分配金・株主優待といったインカムゲインを得ながら、資産を持ち続けるという選択肢もあります。つまり“売らずに受け取り続ける”という出口です。


たとえば…
・生きている間は、自分の生活のゆとりとして楽しむ
・将来的には、子どもや家族に資産として引き継ぐ


こうした“終わらせない出口”も、立派な戦略のひとつです。出口戦略の真の目的は、お金を増やすことではなく、人生の豊かさにどうつなげるかにあります。

【まとめ】投資で成功する人は「出口」を見ている

【まとめ】投資で成功する人は「出口」を見ている

投資で成功する人は、利回りだけを見ていません。「どう増やすか」よりも「どう終わらせるか」を考えています。


お金は増やすための道具ではなく、安心して使うためのパートナーです。だからこそ、「出口」=「どう終えるか」を考えることが、投資の本質だと言えます。


そして、出口は1つではありません。


  •  換金して使う出口
  •  配当や優待を受け取り続ける出口
  •  次世代へつなぐ出口


投資のゴールは“増やすこと”ではなく、“安心して使える状態”をつくること。
そのために、あなたにとって最適な出口を一緒に考えてみませんか?

この記事を書いた人

小川 和哉 | ファイナンシャルプランナー

資産運用、保険、住宅ローンなど幅広い分野に精通し、個人の家計相談に加え、個人事業主や副業を行う方への記帳指導・経理支援にも力を入れており、実務に直結する実践的なアドバイスを提供。ライフスタイルに応じたオーダーメイド設計と、将来を見据えた長期的なサポートを重視し、目先の利益にとらわれない提案が好評。
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