2025.05.21
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親が老人ホームに入所したときの実家売却|居住用財産の3000万円特別控除をわかりやすく解説

親が老人ホームに入所し、長年住んでいた実家が空き家になった——
そんなとき、「この家どうしよう?」「売っていいの?」「税金は?」と迷う方は多くいらっしゃいます。

親御さんが生前に自宅を売却する場合、うまく活用すれば大きな節税になる特例があります。
この記事では、「居住用財産の3000万円特別控除」について、制度の仕組み・注意点・気持ちとの向き合い方まで、やさしく解説します。

実家を売ったら税金はかかるの?

実家を売ったら税金はかかるの?

親が施設に入っても、条件を満たせば家を売却することは可能です。
そして、制度を使えば売却で利益が出ても、税金をほとんど払わずに済むことがあります。

それが「居住用財産の3000万円特別控除」です。


たとえば、実家を3500万円で売って譲渡益が2800万円出たとします。
本来なら20.315%の税率で約560万円の税金がかかりますが、この特例を使えば税金がゼロになる可能性もあります。

「居住用財産の3000万円特別控除」の条件とは?

「居住用財産の3000万円特別控除」の条件とは?

親がその家に現在住んでいなくても、以下の条件を満たせば適用できる場合があります。


  •  入所前まで実際に住んでいた家であること
  •  老人ホーム入所が介護など「やむを得ない事情」によるものであること
  •  入所後も他人に貸していない・事業用途にも使っていないこと
  •  生活の拠点とみなせる実態がある(住民票が移っていてもOKなことも)

※「所得税基本通達33-9」によって、要件が定められています。

【重要】売却には期限がある

【重要】売却には期限がある

この控除は「すでに住んでいない家」にも使えますが、
住まなくなった年の翌年1月1日から3年以内に売却することが条件です。


たとえば:


  •  2022年に施設入所 → 2025年12月31日までに売却

それ以降に売却すると、控除が使えない可能性があります。
「いつから住んでいないか?」は、必ず確認しておきましょう。

よくある失敗パターンとその対策

よくある失敗パターンとその対策

❌ ケース1:家を貸してしまった

親が施設に入り空き家になった実家を、一時的に他人に貸していた。
→ 控除が使えず、大きな税負担に。


❌ ケース2:生活実態がないと判断された

家具を撤去し、住民票も施設へ移していた。
→「生活の拠点」と認められず、制度の適用外に。


✅ 対策

  •  家を売るまでは貸さない・使わない
  •  家具などを残し、「生活の気配」を残しておく
  •  介護記録・診断書などで「やむを得ない入所」であることを証明
  •  不安な場合は専門家や税務署などに事前相談を

売る?売らない?気持ちとの向き合い方も大切

売る?売らない?気持ちとの向き合い方も大切

親が長年住んでいた家。思い出がたくさん詰まっていて、すぐには売れないという方も多いでしょう。

また、親御さん自身が金銭的な損得に関係なく残しておくことを望まれるケースもあります。


「売らない」という判断も、もちろん尊重されるべきです。
そのうえで「もし売るなら、制度の期限はいつまでか」だけでも知っておくと、後悔のない判断ができます。

制度を使うときのポイントまとめ

制度を使うときのポイントまとめ

  •  同じ家に対しては特別控除は一度しか使えない
  •  住まなくなった翌年から数えて3年以内に売却を
  •  売却益によっては数百万円の節税になることも
  •  申告には書類や計算が必要なので早めの準備を

【まとめ】お金にも気持ちにも、納得できる判断を

【まとめ】お金にも気持ちにも、納得できる判断を

家の売却は、単なるお金の話ではなく、家族の歴史にも関わる大切な選択です。

税制を正しく知っておくことで、焦らず、納得感のある判断ができます。


売る・売らないはご家族のペースでかまいません。

でも、「制度が使えるのはいつまで?」「何を気をつければ?」という“知識の準備”は、早めにしておきましょう。



親御さんが亡くなったあとに売却したい場合は 親が亡くなった後に実家を売却する場合の3000万円特別控除|2024年改正で使いやすくなった制度と注意点 もご覧ください

この記事を書いた人

小川 和哉 | ファイナンシャルプランナー

資産運用、保険、住宅ローンなど幅広い分野に精通し、個人の家計相談に加え、個人事業主や副業を行う方への記帳指導・経理支援にも力を入れており、実務に直結する実践的なアドバイスを提供。ライフスタイルに応じたオーダーメイド設計と、将来を見据えた長期的なサポートを重視し、目先の利益にとらわれない提案が好評。
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