【不動産売却の落とし穴】固定資産税の精算金が譲渡所得に?課税回避の実務対応3選
不動産を売却する際、売買契約書に「固定資産税・都市計画税」の精算に関する条項が含まれていることが一般的です。これは、引渡日を基準に売主と買主の間で税金の負担を日割りで調整し、未経過分を買主から売主が受け取るというものです。
しかしこの「固定資産税精算金」、税務上は譲渡所得として課税対象になることをご存じでしょうか?適切に処理しないと、余計な税金負担が発生する可能性もあります。
この記事では、不動産売却時に見落とされがちな「固定資産税の精算金」の課税リスクと、税負担を軽減するための実務対応策を解説します。
■ 固定資産税の精算金は「譲渡所得」に含まれる
■ 固定資産税の精算金は「譲渡所得」に含まれる
国税庁が示す所得税基本通達33-1の3では、次のように記載されています:
土地や建物の譲渡に際し、買主から売主に引渡日以後の固定資産税・都市計画税等の精算金を支払う場合は、譲渡代金の一部とみなされ、譲渡所得の収入金額に算入する。
つまり、精算金は実質的に譲渡対価の一部とされ、譲渡所得として申告が必要です。
よくある誤りとして、精算金を「雑収入」や「預り金」として処理するケースがありますが、これは不適切です。譲渡所得として正しく計上しなければ、税務調査で追徴課税を受けるリスクが生じます。
■ 売主が支払った固定資産税は「経費」にできない?
■ 売主が支払った固定資産税は「経費」にできない?
一方、売主が納付した固定資産税については、譲渡費用にも取得費にも計上できません。つまり、譲渡所得と相殺することはできないのです。
別区分(例:不動産所得)の必要経費に該当する可能性はありますが、不動産売却における所得税計算上は経費扱いになりません。
そのため、
- 固定資産税を支払っても
- 精算金を受け取ることで課税され
結果的に「実費負担+税金負担」という二重のコストが発生することもあるのです。
■ 実際には申告漏れが多く、黙認されている?
■ 実際には申告漏れが多く、黙認されている?
実務上、固定資産税の精算金について申告していないケースをよく聞きます。少額の場合、税務署も黙認していると思われることがありますが、これはあくまで“結果的に指摘されていない”だけです。 契約書に明記されており、かつ金額が数十万円にのぼるようなケースでは、税務調査で確認され、追徴課税を受ける可能性は十分あります。
■ 課税リスクを回避する3つの方法
■ 課税リスクを回避する3つの方法
不動産売却時の固定資産税精算金に関する課税リスクを軽減するために、以下の3つの対応策が有効です。
”精算しない”と契約書に明記する
もっとも明快な回避策は、そもそも精算金を受け取らないことです。売買契約書に次のような条文を記載します:
「本件不動産に係る固定資産税および都市計画税は、売主が全額負担し、買主との精算は行わないものとする。」
このように明記することで、精算金という名目の金銭が発生せず、譲渡所得への加算も避けられます。
売買代金に含めて処理する
精算そのものを省略するのではなく、固定資産税相当額を売買代金に組み込む方法もあります。
「固定資産税等の負担に関する金額は、売買代金に含まれるものとする。」
こうした契約記載により、売買代金の中に税負担分を含めることで、見かけ上の「精算金」は発生せず、税務処理も一貫性が保たれます。
税負担を価格に上乗せして交渉
精算金を別途受け取る場合は、税金分(譲渡所得税率20%※)を見越して売買価格に上乗せする方法もあります。税引後の実質受取額を維持するための交渉材料として活用できます。
※所有期間5年超
【まとめ】不動産売却では「税金の盲点」も見逃さない
【まとめ】不動産売却では「税金の盲点」も見逃さない
固定資産税の精算金は、不動産売却価格とは別に動くお金ですが、税務上は譲渡代金の一部として課税されることを忘れてはいけません。
最も実務的かつトラブルの少ない対応は、(2)の「売買代金に含める」方式です。申告漏れを防ぎながら、買主との調整もしやすく、税務調査でのリスクも最小限に抑えられます。
不動産の売買契約を結ぶ際は、契約書の文言ひとつで税金の扱いが変わる可能性があるため、税理士や専門家に事前相談することが大切です。