2025.06.14
  • ライフプラン

AIとFPの賢い使い分け方|状況で変える“相談相手”の選び方

お金に関する相談を誰にすればよいのか──。

AIの台頭により、今や無料で家計診断や資産シミュレーションを行える時代になりました。一方で、実際に保険の見直しや投資を始めたり、住宅ローンを組んだりするには、人間の手による“実行支援”が欠かせません。

このコラムでは、AIとFP(ファイナンシャルプランナー)の得意分野と限界を明確にしながら、「どう使い分ければ効果的か?」という視点で、最新のお金の相談のあり方をご紹介します。

■ AIは優秀な相談パートナー|まずは気軽に試算と情報整理を

■ AIは優秀な相談パートナー|まずは気軽に試算と情報整理を

家計診断、保険の見直し、老後資金の準備──これまでファイナンシャルプランナー(FP)に相談していたテーマの多くが、今ではAIで気軽に確認できるようになりました。


  •  24時間いつでも無料で使える
  •  ローンや教育資金の試算が一瞬
  •  感情に左右されず客観的な事実で提案がもらえる
  •  数万件以上のデータから統計的に分析


こうした便利さから、「まずはAIで調べる」が当たり前になりつつあります。情報整理・初期の方向性確認において、AIは非常に優秀な相談パートナーといえるでしょう。

■ FPの役割とは?|“相談”のプロフェッショナル

■ FPの役割とは?|“相談”のプロフェッショナル

FPは本来、「お金に関する情報のナビゲーター」であり、相談に特化した存在です。


  •  家計や保険、教育資金、老後資金などの悩みに対し、選択肢や方向性を示す
  •  法律・税金・運用・住宅・介護など幅広く知識を持ち、状況に応じた提案が可能
  •  将来のライフプラン全体を見通してアドバイスできる


しかし、FPにはできないこともあります。


FPにできない主なこと(資格がない場合)


  •  税務申告や税額の確定に関する助言(税理士の業務)
  •  法的効力を持つ書類の作成や助言(弁護士・行政書士などの業務)
  •  投資商品の案内・売買の取り次ぎ(証券外務員・金融商品仲介業者の業務)
  •  保険の商品説明や契約の締結(保険募集人の登録が必要)


このように、FPは「広く浅くアドバイスができる存在」である一方、 特定の実務や契約行為には法的な制限があり、資格や登録がないまま行うことはできません。

■ AIは“資格の壁”の外から自由に情報提供できる

■ AIは“資格の壁”の外から自由に情報提供できる

法律や制度の世界には「独占業務」と呼ばれる領域があります。


  •  税務相談・申告代理 → 税理士
  •  遺産分割協議書の作成 → 弁護士や行政書士
  •  契約書の法的助言 → 弁護士


これらは、資格を持たない者が行うことはできません。 一方で、AIはこの“資格の壁”の外にあります。あくまで情報提供やシミュレーションという形で、自由に活用できます。


  •  所得税や相続税の試算例を提示
  •  遺言書や協議書のフォーマットを案として提示
  •  社会保障制度の仕組みや要件をわかりやすく説明


「誰に聞いていいかわからないこと」「資格がない人には相談できない領域の整理」には、AIの中立性と即時性が非常に役立ちます。 ただし、その内容が法的・制度的に正しいかどうかの最終判断は、AIではできません。ここは専門家の確認が必要です。

■ 原案作成やプラン設計はAIが得意|下地づくりに最適

■ 原案作成やプラン設計はAIが得意|下地づくりに最適

AIは、条件や希望を繰り返し入力・修正しながら、何度でも再計算や構成案の提示ができます。


  •  保険や住宅ローンの条件整理
  •  ライフプラン表の自動作成
  •  遺言・相続関連のたたき台作成


このような“下地”をAIで整えておくことで、専門家に相談する際の精度やスピードが大きく向上します。

■ AIには“気づき”と“実行”ができない

■ AIには“気づき”と“実行”ができない

AIは受け身の存在です。「これについて教えて」と入力しなければ何も始まりません。


  •  制度が変わったことに自分が気づいていない
  •  将来のリスクを自覚していない
  •  生活の変化がどんなお金の影響を及ぼすかを想像していない


こうした“そもそも質問すらしていない部分”を先回りして提示できるのは、やはり人間のFPです。 また、AIは提案こそできても、保険の加入や資産運用、ローン契約などの“実行支援”はできません

■ 資格あるFPだけができる“実行支援”の価値

■ 資格あるFPだけができる“実行支援”の価値

FPの中でも、実行支援を担うには所定の資格の取得と登録が必要です。


  •  保険募集人 → 保険商品の説明・契約手続き
  •  金融商品仲介業 → 投資商品の説明・資産形成の実行支援
  •  住宅ローン取次 → 住宅ローンの説明・融資手続き


このように、AIがどれほど進化しても、実行支援は該当資格保有者にしかできない領域です。

■ FPの実行支援は“お金を動かす力”

■ FPの実行支援は“お金を動かす力”

実行支援ができるFPは、単なるアドバイザーに留まりません。


  •  現在利用中の保険商品や投資している個別銘柄の説明
  •  金融機関や保険会社との間に立ち、実際の契約や申込を進める
  •  複数制度・商品を組み合わせて最適な資金導線を設計・管理
  •  状況変化に合わせて適宜修正


「相談」から「実行」、「アフターサポート」まで一貫して支援できるFPは、人生の伴走者として価値を発揮します。

■ AI × FPのハイブリッド活用が最適解

■ AI × FPのハイブリッド活用が最適解

今後のスタンダードは、AIとFPを使い分けることです。



AIが方向性を示し、FPが実行を支援する。これが、これからの賢いお金の相談の流れです。

【まとめ】AIの賢さ × FPの実行力 = 最強のサポート体制

【まとめ】AIの賢さ × FPの実行力 = 最強のサポート体制

AIの進化によって、いつでも誰でもどこからでも、無料でお金の相談の入口に立てる時代が来ました。 でも、そこから「実行」に移すには、資格と経験を持った人間の力が必要です。

FPは、あなたに気づきを与え、正しくお金を動かす実行力を持った“お金の伴走者”。

“相談”だけでは終わらせない。AIとFPの力を掛け合わせることで、人生の選択肢が広がります。

この記事を書いた人

小川 和哉 | ファイナンシャルプランナー

資産運用、保険、住宅ローンなど幅広い分野に精通し、個人の家計相談に加え、個人事業主や副業を行う方への記帳指導・経理支援にも力を入れており、実務に直結する実践的なアドバイスを提供。ライフスタイルに応じたオーダーメイド設計と、将来を見据えた長期的なサポートを重視し、目先の利益にとらわれない提案が好評。
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