2025.09.03
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住宅購入の資金計画に無理はない?変更を検討すべきケースと安心の備え方

住宅購入を検討しているときは気分が盛り上がっているので、計画を見直す・延期するという判断は難しいものです。しかし、マイホームは何十年もかけて返済を続ける人生最大の買い物。勢いだけで突き進むのではなく、完済を見据えた資金計画を立てることが大切です。


今回はFPとしての実務経験をもとに、計画を「変更」すべき典型的なケースと、その回避方法を具体的に解説します。

■ 資金計画に無理があるケース

■ 資金計画に無理があるケース

住宅購入における最大の失敗は「無理な返済計画」を立ててしまうことです。具体的には以下のような状況は要注意です。


  •  ボーナス払いを前提にしないと返済が成立しない
  •  現在の労働環境や残業代を当たり前として計画している
  •  変動金利でなければ審査に通らない
  •  変動金利を選んだ場合、将来の金利上昇を想定していない
  •  修繕費・リフォーム費用を見込んでいない


「今の収入なら払える」と思っても、将来にわたって同じ条件で収入が続く保証はありません。資金計画は少し余裕を持たせ、「今返せるかどうか」ではなく「無理なく返し続けられるか」を基準に検討することが重要です。

■ ライフプランが固まっていないケース

■ ライフプランが固まっていないケース

住宅ローンは長期にわたる契約です。そのため、将来のライフプランが不透明な場合には計画を一度見直す必要があります。


  •  結婚・出産の希望はあるが具体的な予定が未定
  •  勤務先の都合で転勤や転居の可能性が高い
  •  両親の介護で実家に戻る可能性がある

このような状況で住宅ローンを組むと、思わぬ時期に住み替えや売却を迫られ、余計な負担が発生することがあります。購入を前に、ライフプランと資金計画をリンクさせることが不可欠で、勇気をもって一旦延期という選択も視野に入れる必要があります。

■ 短期間ローンの落とし穴

■ 短期間ローンの落とし穴

「老後に住宅ローンを残したくない」という気持ちから、返済期間を短縮する人もいます。しかし、これは一見合理的に見えて大きな落とし穴が潜んでいます。


例えば、4,000万円を固定金利2%で借りた場合、35年返済なら月々の返済額は約13万円です。これを20年に短縮すると、毎月の返済は約20万円に膨らみます。45歳の人が65歳までに完済しようと20年ローンを選べば、80歳完済の35年ローンに比べて毎月7万円の負担増となります。


45歳といえば、子どもの教育費や親の介護費がかかる可能性が高く、自分自身も体調の変化や勤務先の事情で収入が減るリスクがあります。その中で月7万円の負担増は大きなリスクです。


80歳完済にすると返済総額は700万円ほど増えます。完済時期を早めると返済総額が少なくなる代わりに家計の安定性を犠牲にしてしまうのです。


ただし80歳完済がデメリットになるとは限りません。毎月の返済額を13万円に抑えて余力の7万円を年率3%で20年間積立投資すると、およそ2,300万円に成長する可能性があります。この資金を65歳以降に取り崩せば、15年分の住宅ローン支払いをほぼカバーでき、老後も年金収入から負担することなく安心です。


ちなみに金融庁が公表している「国内外の株式・債券に分散投資した場合の収益率の分布」によると、つみたてNISAで保有期間20年の場合の利回りは年2~8%になると試算されています。年率3%はそれほど難しい数字ではありません。

参考資料はこちら

■ ゆとり資金の積み立てでリスクに備える

■ ゆとり資金の積み立てでリスクに備える

住宅ローン返済中でも、ゆとりを持つことが大切です。そのゆとりは「預金で眠らせる」のではなく、将来に備えて運用することをおすすめします。特に、つみたてNISAなどの非課税制度を活用すれば、効率的に資産を増やすことが期待できます。


積み立てをしていれば、万一の収入減少や金利上昇に直面しても、積み立てを減額・中止したり、積み立てた資産を取り崩すことで一時的にしのぐことができます。返済期間中に家計にゆとりを持たせる仕組みを整えておくことが、住宅ローン完済への一番の近道です。

■ 【まとめ】夢をかなえるために「計画変更」という選択を

■ 【まとめ】夢をかなえるために「計画変更」という選択を

住宅購入は人生最大の買い物です。気持ちが盛り上がるあまり、無理な計画で突き進むことは避けなければなりません。計画に無理があっても「諦める」のではなく、「計画を変更する」ことで解決できることも多々あります。

返済期間を延ばして月々の負担を抑えたり、物件価格を見直したり、将来の支出を想定して積み立てを続けたり。そうした工夫を重ねることで、無理のない資金計画と安心できる暮らしを両立できます。


夢のマイホームは「勢い」ではなく「冷静な計画」で手に入れるもの。完済を見据えた柔軟な資金計画こそが、長い人生を安心して過ごすための第一歩です。

この記事を書いた人

小川 和哉 | ファイナンシャルプランナー

資産運用、保険、住宅ローンなど幅広い分野に精通し、個人の家計相談に加え、個人事業主や副業を行う方への記帳指導・経理支援にも力を入れており、実務に直結する実践的なアドバイスを提供。ライフスタイルに応じたオーダーメイド設計と、将来を見据えた長期的なサポートを重視し、目先の利益にとらわれない提案が好評。
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