【応用編】医療保険不要論に一言言わせて！

ケガや病気による入院や通院にかかる費用の負担を軽減してくれる医療保険は、もしものときの備えとして加入しておくと安心です。しかし医療保険は必要ないという意見もあります。 多少お金に余裕があったり健康に自信があるなど、保険料を払いたくない人ほど「保険に加入しなくてもいい」という話に飛びつきやすい傾向を感じますが、本当に加入しなくていいかどうかは冷静な検討が必要です。 今回は、医療保険が不要と言われる理由と、医療保険に加入しておいたほうがいいケース、医療保険が必要だと思う理由について解説します。

① 公的医療保険制度が充実している

日本は「国民皆保険制度」を導入しているため、全ての国民が何らかの公的医療保険に加入していることになっています。治療費や入院基本料が発生したとしても医療機関の窓口で保険証を提出すれば、原則として自己負担額は3割で済みます。

② 高額療養費制度がある

大きな手術をしたり入院が長引いてしまうと、自己負担額が3割でも支払う金額が高額になります。公的医療保険が適用になる診療については、1カ月に支払う医療費が高額になりすぎないように、年齢や所得によってさらに負担が軽減されるようになっています。

③ 支払った保険料の元が取れない

医療保険を契約したら保険料を支払い、入院や手術などがあった場合に契約内容に応じた保険金が支払われます。よほど入院や手術の回数が多くない限り、保険料として支払った金額分以上の保険金を受け取ることは難しいでしょう。

① 貯蓄が十分にある

もしものときに使える貯蓄（数回程度の入院や手術分ではなく相当程度の貯蓄）がある場合は、貯蓄から医療費を支払えばよいので医療保険は不要でしょう。

② 治療期間中に収入が減ったり、途絶えても困らない

ケガや病気によって一定期間仕事ができない状態になった場合、収入が減ったり解雇されて収入が途絶えてしまうケースがあります。仕事ができない期間が長くなってしまっても、その間の収入が保証されたり、雇用が継続される労働環境の場合は医療保険は不要でしょう。

① 入院したら個室に入りたい

入院する際、大部屋ではなく個室に入りたい場合は差額ベッド代が必要になります。医療機関や病室の区分（一般個室、2人～4人部屋など）によって異なりますが、1日あたり5,000円～数万円程度が一般的です。他人の物音やいびきで眠れないとか、人目が気になるので個室がいいという人は差額ベッド代が加算される分、入院費用が高くなります。

② 加入しなかったことを後悔したくない

ケガや病気で入院や手術をした場合、たとえ完治したあとでも当分の間は保険に加入することが困難になります。 受けた治療の内容によっては一生加入できなかったり、割高な保険料の医療保険にしか加入できない場合があります。 治療開始前であっても、医師から診断を受けた場合はその時点でもう保険への加入は難しいと考えておくべきでしょう。

医療保険に加入しているほとんどの人は、自分が支払った保険料の総額より受け取る保険金が少ないものです。 それにも関わらず、私が医療保険を必要だと思うのは、保険が役にたつタイミングと、その後にとれる対処が限定的な点です。

一般的に、保険が役に立つのは高齢になってからです。例えば医療費が20万円かかって貯蓄から支払ったとしても、若いうちならその分を稼いで補填することができますが、収入が年金しかない場合はその穴埋めは簡単ではありません。 さらに、高齢になると病院のお世話になる回数も増える傾向にあり、入院も1度で済めばよいですが、2度3度となるとその都度預金の残高が減ることになります。 医療保険に加入せずそのお金を貯蓄に回して備えていたとしても、いざ医療費を支払うことになると、たとえ想定の範囲内だったとしても貯蓄の残高が減っていくのは心が痛むものです。 そして退院後にできる対処としては、もう病院のお世話にならないよう健康でいるように努力することくらいしかありません。 若くて健康なうちはケガや病気で病院のお世話になる可能性は低く、例え1度や2度お世話になったとしても貯蓄を増やして備えたり、改めて保険に加入することができるケースもあるでしょう。 しかし高齢になると次の入院に備えてお金を貯めることも、保険に加入することも難しいものです。

これらの理由から、私は医療保険が必要であると考えます。 老後になってから医療費の支払いで困りたくないので、今からコツコツ保険料を支払います。 医療保険に加入したからといって、病院代の全てが賄えられるわけではありませんし、支払った保険料より受け取る保険金が少ない可能性が高いことも承知しています。 でも老後になってから加入しなかったことを後悔したくありません。 トータルの支払い保険料は決して安くはありませんが、若いうちに加入しておけば月々1,000円程度から準備できます。

保険に加入したのに一度も病院のお世話になったことがない人は、支払っている保険料が無駄だと思うかもしれません。 しかし入院も手術もせずに一生を終えられるかどうかは最期までわかりません。 医療保険は必要ないと考えることが間違っているわけではありませんが、単に保険料の支払いがもったいないから、という理由で加入しないとしたらそれはさすがに安直すぎると諫言させていただきます。