住宅ローン控除で損しない!ペアローン・収入合算の損得を税額別で徹底比較
住宅を購入する際によく聞く「住宅ローン控除」。
「最大○○万円が控除される」という説明を聞くと、あたかもその金額がそっくり戻ってくるように思いがちですが、実際には「控除額=節税額」ではありません。
控除されるのは「その年に支払った所得税や住民税」の範囲内。 つまり、もともと税金をあまり払っていなければ、控除しきれず“取りこぼし”が発生します。
特にペアローンや収入合算など、夫婦で住宅ローンを組む場合には、「借入の割合」によって控除の効果が大きく変わるため注意が必要です。
■ 今回のシミュレーション条件
■ 今回のシミュレーション条件
- 借入金額:4,500万円
- 控除率:0.7%
- 控除額上限:年31.5万円(4,500万円 × 0.7%)
【世帯主】
- 年 収:500万円
- 所得税:13万円
- 住民税:23万円
【配偶者】
- 年 収:200万円
- 所得税:3万円
- 住民税:6万円
■ パターン①:ペアローン(50:50)
■ パターン①:ペアローン(50:50)
借入割合を世帯主50%(2250万円)、配偶者50%(2250万円)に設定。
【世帯主】
控除額:15.75万円
所得税から:13万円控除
残額2.75万円 → 住民税から控除(23万円の範囲内)
→ 控除しきれた
【配偶者】
控除額:22.68万円
所得税から:3万円控除
残額12.75万円 → 住民税から最大6万円まで控除
→ 控除しきれなかった金額:6.75万円
結果:控除適用額28.75万円、取りこぼし6.75万円
■ パターン②:ペアローン(72:28)
■ パターン②:ペアローン(72:28)
借入割合を世帯主72%(3240万円)、配偶者28%(1260万円)に設定。
【世帯主】
控除額:22.68万円
所得税から:13万円控除
残額9.68万円 → 住民税から控除(23万円の範囲内)
→ 控除しきれた
【配偶者】
控除額:8.82万円
所得税から:3万円控除
残額5.82万円 → 住民税から控除(6万円の範囲内)
→ 控除しきれた
結果:控除適用額31.5万円、取りこぼしゼロ!
■ パターン③:収入合算(単独名義)
■ パターン③:収入合算(単独名義)
世帯主が単独で4500万円を借入れた場合、控除枠は全額世帯主に。
【世帯主】
控除額:31.5万円
所得税から:13万円控除
残額18.5万円 → 住民税から9.75万円まで控除(上限あり)
→ 控除しきれなかった金額:8.75万円
結果:控除適用額22.75万円、取りこぼし8.75万円
■ 結論と注意点
■ 結論と注意点
今回のケースでは、ペアローンで借入割合を「世帯主72%・配偶者28%」にすることで、控除を無駄なく使い切れました。 このように、控除を最大限活かすには借入割合の設計がカギになります。
実際には、生命保険料控除など他の控除があると思いますので、計算はより複雑になります。
■ ペアローンの注意点:控除だけではないコスト面
■ ペアローンの注意点:控除だけではないコスト面
控除の恩恵が大きいペアローンですが、気をつけたいポイントもあります。
登記・諸費用が2人分かかる
- 登録免許税・司法書士費用・事務手数料などで5〜10万円前後増加
団信(団体信用生命保険)が個別契約
- 世帯主に万が一があっても配偶者分のローンは残る
- 収入合算であれば、ローン全額が団信で消滅する場合が多い
【まとめ】大切なのは具体的なシミュレーション
【まとめ】大切なのは具体的なシミュレーション
住宅ローン控除を最大限活かすには、「控除枠」ではなく「実際に支払う税額」に注目する必要があります。 控除を使いきれなければ、その分は戻ってこない「幻の控除」になってしまいます。
特にペアローンを選ぶなら、借入割合の調整・諸費用の増加・団信の保障範囲といった要素も踏まえ、総合的に判断しましょう。
住宅購入は長期にわたる資金計画のスタートです。 損のない判断をするためにも、実際の税額・収入・家族構成に応じて、専門家とシミュレーションすることをおすすめします。